よく聞く評判と実態を確かめる
「公務員は給料が低くても、福利厚生が充実しているからトータルで悪くない」――そう聞くことが多いはず。私自身の在職経験をもとに、使えた制度/使いづらかった制度を具体的に洗い出し、公務員の福利厚生はどうだったのか整理しました。
結論は、“しっかりしているが、民間大手最上位には届かない”です。
公務員の福利厚生は何で構成される?
福利厚生を大きく分類すると以下になります。
- 休暇:年休、病休、特別休暇(結婚/出産/忌引など)、育児・介護関連。
- 共済:医療(付加給付/人間ドック補助の有無など)、年金、各種給付・貸付。
- 手当:住居、通勤、地域、扶養、単身赴任、寒冷地など(所属や条件で差)。
- 生活サポート:互助会や福利厚生センターの割引・見舞金、相談窓口。
- 人材育成:研修、外部講座補助・派遣研修・学費助成。
注意:運用は組織・自治体で差。地方公務員としての一例を挙げています。
休暇制度:取りやすさの実態とコツ
- 有給(年休):付与日数は十分でも、繁忙期の取得は難度が上がる。分割取得や早期申請が鍵。
- 夏季休暇:有給とは別に5日付与。好きな月に取得可能で、私は7〜9月の繁忙/閑散を見ながら分散取得していました。役所はお盆休み(一斉休業)がないため、この制度で各自が柔軟に休む運用でした。
- 病休:メンタル不調を含め、診断書→面談→復職支援の流れが整備。期間や給与扱いは規程通りで安定。
- 介護:短期のスポット休暇は取りやすいが、長期化は調整コストが大きい。
ポイント:休暇については有給と夏季休暇があり、カレンダー通り休めるのが特徴。
共済:医療・年金・給付の“見えにくい価値”
- 医療:自己負担や付加給付が家計のダメージを抑える。自治体によっては人間ドック補助あり。
- 年金:在職年数×等級推移で将来受給が積み上がる。民間と単純比較しづらいが、長期在職で安定度は高い。
- 給付/貸付:出産・傷病・災害・弔慰などの給付、生活資金の貸付メニュー。申請しないと受け取れない項目が多い。
ポイント:共済の給付は、申請しないと受給できないものが多い。知らないと受け取れないため制度の有無の確認は必須。
各種手当:住居・通勤・地域・扶養
- 住居手当:上限と対象条件の確認を。持家/借家で取り扱いが異なる。賃料改定時は忘れず再申請。 体験談:若手のうちは上限27,000円の支給があり、年齢が上がると支給額が段階的に減少。また職員寮の選択肢もあり、月2〜3万円程度で入居できた。築年数は古い場合が多い。
- 通勤手当:定期/実費、交通手段ごとの範囲。テレワーク制度の有無で実費との乖離が出やすい。
- 地域手当:勤務地次第で率が変動。都心(例:東京の一部)では基本給の約20%が加算され、地方に行くほど割合は下がり、支給のない地域もある。転居=実質年収の変動につながる。
- 扶養等:配偶者・子・親の要件と所得基準。ライフイベント時は必ず見直しを。
ポイント:住居手当、職員寮がある場合が多いが、金額は限定的である。
生活サポートとメンタルケア:互助会/相談窓口
- 互助会/福利厚生センター:保養所・提携宿泊やレジャー割引、チケット補助、見舞金など。 体験談:カフェテリアプランがあり、旅行代の補助が年間最大3万円まで支給。自分で手配した旅行にも使え、使い勝手が良かった。
- メンタルケア:EAP(外部相談)や産業医面談、リワーク支援がある場合も。周知不足で使われにくいのが課題。
ポイント:旅行や宿泊代金の補助は使い勝手がよい。申請が必要な場合が多く、注意が必要。
研修・自己啓発支援:実情と大きな制約
- 制度の実情:内部研修はあるが、外部講座補助や派遣研修、学費助成は枠が限られ、部門や上長の裁量差が大きい。
- 雇用保険の適用外:多くの公務員は雇用保険に加入していないため、ハローワークの教育訓練給付金の対象外。自己投資の金銭的支援は乏しいのが実態。
- 他制度との比較:民間大手にあるポイント型福利(自己啓発に自由配分)や在宅環境手当などの柔軟な上乗せは少ない。
まとめ:学び直しは自費前提になりやすい。費用対効果を見極め、必要最小限を選ぶ設計が現実的。
実質年収で比べる:民間大手との違い
- 見るポイントは4つ:
- 現金給与(俸給+手当)
- 福利(共済・給付・各種補助)
- 時間(残業の出方/休暇の取りやすさ)
- 将来価値(年金・退職金・学び・株式報酬(ストックオプション/RSU))
- ざっくり傾向:
- 公務員は ②③④が安定 → 「休める」「給付が読める」「将来が見通せる」。
- 民間大手は ②④の“上乗せ”が強い → 医療・メンタル補助、在宅手当、株式報酬(ストックオプション/RSU)、住宅手当や各種手当が充実していることがある。
- 超シンプル比較(イメージ):
- 公務員:現金は控えめだが、共済+休暇の確実性+年金で実質が底上げ。
- 民間大手:現金はやや高めに加え、会社独自の上乗せ福利、株式報酬(ストックオプション/RSU)や住宅手当・各種手当が充実していることがあるため、さらに伸びるケース。
- 結論:
- 総合点は公務員も高いが、“最厚レベル”は民間大手が上になりやすい。特に住宅手当や各種手当は民間大手のほうが充実していることがある。株式報酬(ストックオプション/RSU)がある場合、将来価値の差が大きくなることがある。
体験談:助かった点/物足りなかった点
助かった点
- 夏季休暇5日が有給と別枠:好きな月に使え、私は7〜9月で分散取得。役所にお盆の一斉休業がないぶん、柔軟に休めた。
- 有休の計画取得が通りやすい:期初に共有+引継ぎテンプレで、繁忙期も小刻みに確保できた。
- 住居まわりの安心感:若手は住居手当上限27,000円の恩恵。加えて**職員寮(月2〜3万円程度)**という低コスト選択肢があった。
- 互助会のカフェテリアプラン:旅行代の補助が年最大3万円。自分手配の旅行にも使え、実用性が高かった。
物足りなかった点
- 雇用保険の適用外で、教育訓練給付金が使えない:学費補助の選択肢が狭く、自己投資は自費前提になりがち。
- 自己啓発の外部支援が限定的:外部講座補助や派遣研修は枠が少なく、部門や上長の裁量差も大きい。
- 住宅手当の課題:支給額はやや控えめで、もう少し手当があってもよいと感じた。また職員寮は築年数が古く、快適な住居環境とは言えない場合もある。
- 株式報酬(ストックオプション/RSU)がない:民間大手にある株式報酬がなく、貯蓄以上の上振れは期待できない。
- 取りやすさの“ブレ”:休暇は制度上は厚いが、部署の余力次第で体感が変わる。繁忙部署では休暇は取りにくい。
私見:体験からの結論
在職して感じたのは、世間で言う「公務員の福利は充実」という評判は、民間大手の水準で見ると「最低限がきちんと揃っている”に近いということ。実感に近い言葉は充実よりも安定」です。
たとえば、夏季休暇5日(有給とは別枠)や計画有休、共済の付加給付、互助会のカフェテリア(旅行補助 年3万円・自分手配OK)など、生活の土台はしっかりしていました。一方で、住宅手当は控えめ、株式報酬(SO/RSU)はない、そして多くは雇用保険の適用外で教育訓練給付金の対象外——このあたりは民間大手と比べて厚みが出にくい部分です。
結論として、公務員は“安定思考”の制度設計。安定と予見可能性を重んじるなら十分に魅力がある。一方、上乗せ(住宅・各種手当の厚さ、株式報酬)や将来価値の伸びを求めるなら、民間大手のほうが合う場面が多い——これが私の私見です。
まとめ
- 住宅・地域・学び直し:若手期の住居手当(上限27,000円)や職員寮(月2〜3万円)は支給。ただし手当自体は控えめで、地域手当は都心高率/地方は低率〜無支給。多くの公務員は雇用保険適用外のため教育訓練給付金の対象外で、学び直しは自費前提。
- これらの制度はよかった:夏季休暇5日(有給と別枠・好きな月で取得可)/カフェテリア(旅行補助 年3万円・自分手配OK)。
- 結論:公務員の福利は「充実」より安定。実質年収を底上げする一方、民間大手の上乗せ(住宅・各種手当/在宅手当・ポイント型福利/株式報酬(SO/RSU))に及ばない場面がある。